2 次冷却ループの水の仕様
熱交換器に供給される水が、このトピックに記載されている要件を満たしていることが非常に重要です。液体冷却システムをセットアップする前に、要件を満たしていることを確認してください。
熱交換器に供給される水が、このトピックで説明する要件を満たしていないと、以下のいずれかの問題の結果としてシステム障害が発生する可能性があります。
- 熱交換器あるいは水の供給システムの、金属製のコンポーネントが腐食したり穴があいて水漏れする。
- 熱交換器内部にスケール沈積が起こり、下記の問題の原因になる可能性がある。
- ラックから排出される空気を冷却する熱交換器の能力低下
- 機械的なハードウェア障害 (ホースのクイック接続継手など)
- バクテリア、カビ、または藻類などの有機生物が混入する。この有機生物混入で、スケール沈積に対して説明したものと同じ問題が起こる可能性があります。
2 次冷却ループの水の制御および調整
熱交換器の充填、補充、および供給に使用される水は、粒子のない脱イオン水または粒子のない蒸留水であり、次の問題を回避するために適切に制御する必要があります。
- 金属の腐食
- バクテリアによる汚れ
- こけの付着
2 次ループで使用する素材
供給ライン、コネクター、多岐管、ポンプ、および閉ループ給水システムを構成するその他のハードウェアには、以下の材料のいずれかを使用してください。
- 銅
- 真ちゅう (含有する亜鉛 30% 未満)
- ステンレス鋼 303 または 316
- 過酸化物硬化エチレン・プロピレンジ・エンモノマー (EPDM) ゴム、非金属酸化物材料
2 次ループで避ける必要のある素材
給水システムのどの部分にも次の材料を使用しないでください。
- 酸化殺生物剤 (塩素、臭素、および二酸化塩素など)
- アルミニウム
- 真ちゅう (含有する亜鉛が 30% より多い)
- 鉄 (非ステンレス鋼)
2 次ループに対する水供給の要件
このセクションでは、冷却され調整された水を熱交換器に供給するシステムに固有の特性を説明します。
温度:
熱交換器およびその供給ホースと返送ホースは断熱されていません。どのような条件下でも、結露の原因となる可能性を回避してください。供給ホース、返送ホース、および熱交換器の内部の水温は、熱交換器を使おうとする場所に おける露点より高く維持する必要があります。
重要建物の冷水は 4°C 〜 6°C (39°F 〜 43°F) まで冷える可能性があるため、一般的な一次冷水は冷たすぎてこの用途では使用できません。重要冷却水を供給しているシステムは、室内の露点の測定およびそれに応じた水温の自動調整を行うことが可能でなければなりません。そうでない場合、水温は、そのデータ・センター施設の最大露点より上でなければなりません。例えば、以下の最低水温が維持されなければなりません。- 18°C ±1°C (64.4°F ±1.8°F)。これは、最大露点17°C (62.6°F) を必要とする ASHRAE クラス 1 環境仕様内で適用できます。
- 22°C ±1°C (71.6°F ±1.8°F)。これは、最大露点21°C (69.8°F) を必要とする ASHRAE クラス 2 環境仕様内で適用できます。
ASHRAE 資料「データ処理環境の温度ガイドライン」を参照してください。このドキュメントの入手については、https://www.techstreet.com/ashrae/products/1909403 を参照してください。
圧力
2 次ループ内の水圧は 690 kPa (100 psi) 未満でなければなりません。熱交換器の通常稼働時の水圧は 414 kPa (60 psi) 以下でなければなりません。
流量
システム内を流れる水量は、毎分 23 から 57 リットル (6 ~ 15 ガロン) の範囲内でなければなりません。熱交換器 (クイック接続継手を含む) の流量に対する圧力損失は、流量が毎分 57 リットル (15 ガロン) の場合で約 103 kPa (15 psi) であるものとして設計されています。
水量制限
熱交換器が保持する水量は、約 9 リットル (2.4 ガロン) です。長さ 15 メートル (50 フィート)、内径 19 mm (0.75 インチ) の供給ホースおよび返送ホースは約 9.4 リットル (2.5 ガロン) を保持します。水漏れの際に水があふれる危険性を最小限にするために、貯水タンクを除く製品全体の冷却システム (熱交換器、供給ホースおよび返送ホース) は、最大で 18.4 リットル (4.8 ガロン) の水を保持する必要があります。これは機能要件ではなく、「注意」の注記です。熱交換器に水を供給する 2 次ループに水漏れ検知策を講じることも考慮してください。
外気との接触
2 次冷却ループは閉じたループであり、継続的に部屋の空気にさらされることはありません。ループに注水した後に、ループからすべての空気を取り除いてください。システムからすべての空気を取り除く (パージする) ためのエアー排出バルブは、熱交換器の多岐管の上部にあります。
2 次ループに対する水配分の仕様
このセクションには、冷却および調整された水を熱交換器に供給するデリバリー・システムの 2 次ループを構成するさまざまなハードウェア・コンポーネントが含まれています。このデリバリー・システムには、パイプ、ホース、および熱交換器にホースを接続するのに必要な接続ハードウェアが含まれています。上げ床環境および非上げ床環境でのホース管理についても説明します。
熱交換器が最適の状態で稼働しているときは、個々のラックから熱負荷をほぼ 100% 除去することができます。
1 次冷却ループは、建物の冷却水供給装置、あるいはモジュラー冷却装置と考えられます。1 次ループは、熱交換器に対する冷却水の直接の供給源として使用できません。
このトピックの主な目的は、熱交換器に適切かつ安全に水を供給するために必要な 2 次ループのセットアップと動作特性の一般的な方法の例を提供することです。
- ISO 4126-1 に準拠します (このドキュメントの入手については、https://webstore.ansi.org/Standards/ISO/ISO41262013 をご覧ください。文書番号 iso 4126-1 で検索してください)。
- 点検、保守、修理のために簡単にアクセスできるように設置する。
- 保護対象の装置にできるだけ近づけて接続する。
- ツールを使用することでのみ調整可能である。
- 排出された水や流体が人に危害を加えない方向、あるいは人に向かって排出されない方向に排出口が設けられている。
- 最大使用圧力を超えないように、十分な吐出容量を確保する。
- 過圧安全装置と保護装置の間にシャットオフ・バルブなしで設置する。
- すべての熱交換器に提供される合計流量のモニターと設定を行う方法が必要です。これは、フロー・ループに組み込まれた別個の流量計にするか、冷却水配分装置 (CDU) の 2 次ループ内の流量計にすることができます。
- 上記のとおり流量計を使用してすべての熱交換器の合計流量を設定した後、熱交換器ごとに必要な流量を提供し、流量を確認できるように配管を設計することが重要です。16 ページの図 5 から 19 ページの図 8 は、回路セッターを使用して各熱交換器の流量を調整する方法を示しています。これ以外の方法 (インライン流量計や外付け流量計など) では、個々のシャットオフ・バルブを使用して流量をもっと正確に設定することができます。
- フロー・ループ内の合計圧力損失を最小化するように、フロー・ループを設計してください。オプションの低インピーダンス・クイック接続フィーチャー (16 ページの図 5 と 19 ページの図 8 に示されています) は、4 つの連続したクイック接続ペアからのフローに関連した過剰な圧力損失のために、熱交換器で使用される Eaton 社製のクイック接続継手にすることはできません。これらの接続は、非常に低い (ほぼ 0) フロー・インピーダンス・クイック接続でなければなりません。または、これらのクイック接続を除去して、ホース口接続に取り替えることもできます。
1 次および 2 次冷却ループ
図 1. 1 次および 2 次冷却ループこの図は、一般的な冷却ソリューションを示し、1 次冷却ループと 2 次冷却ループのコンポーネントを示しています。
組み立てられた設備ソリューションを備えた冷却水配分装置
図 2. 組み立てられた設備ソリューションを備えた冷却水配分装置この図は、組み立て済みの設備ソリューションの例を示します。2 次ループに接続する熱交換器の実際の数は、2 次ループで作動する冷却水配分装置の能力によって異なります。
既製のサプライヤー・ソリューションを備えた冷却水配分装置
図 3. 既製のサプライヤー・ソリューションを使用する冷却水配分装置注サプライヤーが製造した冷却水配分装置 (CDU) の推奨機能:- 温度と流量の計測 (監視)
- 漏水検知または水位検知とシャットダウン
- ローカルおよびリモートの監視と制御
- 充填および水処理用のアクセス・ポート
この図は、市販のモジュール式冷却水配分装置の例を示しています。2 次ループに接続する熱交換器の実際の数は、2 次ループで作動する冷却水配分装置の能力によって異なります。
調整された水を供給するための冷却水チラー装置を備えた冷却水配分装置
図 4. 既製のサプライヤー・ソリューションを使用する冷却水配分装置注サプライヤー製の冷却水チラー装置に必要な機能:- 温度と流量の計測 (監視)
- 漏水検知または水位検知とシャットダウン
- ローカルおよびリモートの監視と制御
- 充填および水処理用のアクセス・ポート
この図は、調整された水を 1 つまたは複数の熱交換器に供給する冷却水チラー装置の例を示しています。この装置は、クローズ・システム (水が空気に触れることがない) で、本書に明示した材料、水質、水処理、および温度とフローのすべての仕様を満たす必要があります。冷却水チラー装置は、Rear Door Heat eXchanger からの熱を除去するための建物冷却水供給源の代替装置として使用可能と認められます。
多岐管とその配管
ポンプ装置から大口径の供給管を受ける多岐管は、個々の熱交換器用に配置されるより小口径のパイプあるいはホースに水流を分割するための適切な方法です。多岐管は、ポンプ装置および関連するパイプと互換性のある素材で作成される必要があります。多岐管は、供給管路と返送管路が接続可能な十分な接続ポイントを備えている必要があります。また多岐管は、ポンプと (2 次冷却ループと建物の冷却水供給源の間にある) ループ熱交換器の容量定格に合っている必要があります。すべての多岐管を固定および拘束して、クイック接続継手を多岐管に接続するときに動かないように支えることが必要です。
多岐管の供給パイプ・サイズの例
- 内径 50.8 mm (2 インチ) 以上の供給パイプ 1 本を使用して、内径 19 mm (0.75 インチ) の供給ホース 3 本に適切な水流を供給する (100 kW の冷却水配分装置 (CDU) を使用)。
- 内径 63.5 mm (2.50 インチ) 以上の供給パイプ 1 本を使用して、内径 19 mm (0.75 インチ) の供給ホース 4 本に適切な水流を供給する (120 kW の CDU を使用)。
- 内径 88.9 mm (3.50 インチ) 以上の供給パイプ 1 本を使用して、内径 19 mm (0.75 インチ) の供給ホース 9 本に適切な水流を供給する (300 kW の CDU を使用)。
複数の巡回路ループの個々の管路で水流を止めるには、各供給管路と返送管路にシャットオフ・バルブを取り付けます。これにより、ループ内の他の熱交換器の運用に影響を与えずに、個々の熱交換器の保守あるいは交換を行うことができるようになります。
水に関する仕様条件が確実に満たされ、また最適な熱除去が行われるようにするには、2 次ループで温度および流量を測定 (監視) してください。
すべての多岐管とパイプを固定および拘束して、クイック接続継手を多岐管に接続するときに動かないように支えることが必要です。
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フレキシブル・ホースおよび多岐管と熱交換器への接続
パイプおよびホースの構成はさまざまです。お客様自身がご使用の設備のニーズを分析することにより、取り付け環境に最適な構成を決定できます。また、設置場所準備の担当者がこの分析を行うことも可能です。
ご使用の配管設備 (多岐管および冷却水配分装置) と熱交換器の間で水の供給と返送を行うのに、フレキシブル・ホースが必要です (ラック背面ドアの開閉時に動く必要があるため)。
水に許容可能な圧力損失特性を提供し、腐食防止物質の消耗を防ぐホースが使用可能です。これらのホースは、過酸化物加硫されたエチレン・プロピレン・ジエン・モノマー (EPDM) ゴム (非金属酸化物) でできていて、一方の端には、熱交換器に接続される Eaton セルフカップリング・タイプのクイック・コネクト・ボール・バルブが付いていなければなりません。もう一方の端には、低インピーダンス・クイック接続継手が付いているか、またはホース口に接続するために何も付いていないかのいずれかでなければなりません。このトピックで説明する Eaton ボール・バルブは、熱交換器カップリングと互換性があります。ホースの長さは 3 から 15 メートル (10 から 50 フィート) で、3 メートル (10 フィート) きざみで使用可能です。ホースの長さが 15 メートル (50 フィート) を超えると、二次回路に許容できない圧力損失が発生し、水流が減少し、熱交換器の熱除去能力が低下する可能性があります。
ホースを熱交換器に接続するには、クイック接続継手を使用します。熱交換器に接続するホースの継手は、以下の特性を持っている必要があります。
- カップリングは 303 ステンレス鋼で作られ、サイズは 25 mm (1 インチ) である必要があります。
- ホースには、Eaton 部品番号 FD83-2046-16-16 または同等のものが必要です。
- ホースの他方 (多岐管) の側で低インピーダンス・クイック接続継手が使用される場合は、ホースを外したときに水の損失を防ぐため、ポジティブ・ロック・メカニズムを使用してください。この接続方法を使用すると、水がこぼれたり、ホースを外したときにシステム内に空気が入るのを最小限にとどめます。